朝日ネット 技術者ブログ

朝日ネットのエンジニアによるリレーブログ。今、自分が一番気になるテーマで書きます。

Peering Asia 3.0 参加レポート

ネットワーク部の t と たかぎ です。主にISP、VNEサービスのバックボーン構築・運用を担当しています。

今回は、2019年11月6日、7日にマレーシアの首都クアラルンプールにて開催された「Peering Asia 3.0」の様子をお伝えします。

Peering Asia とは

Peering Asia は「Promoting peering and interconnection in the Asia Pacific region (アジア太平洋地域のピアリングおよび相互接続の更なる発展)」を目的としたアジア太平洋地域のピアリングミーティング・イベントです。第一回の Peering Asia 1.0 は京都、 第二回の Peering Asia 2.0 は香港で開催されました。

"Asia" といっても、参加者はこの地域の事業者のみではなく、世界中から「アジア太平洋地域のネットワーク」に関わる人たちが集まります。

最近は海外の事業者が日本に接続拠点を持つことも多く、逆もまた然りで、日本の企業などが海外に接続点を持つケースも増えてきています。もちろんネットワーク的にネクストホップでも、中のエンジニアたちはお互い離れた場所にいるので、通常やり取りはメールがメインとなります。直接顔を合わせてディスカッションすることで、より細かなニュアンスが伝わり、またお互いの信頼もより強固なものにできます。このように Peering Asia はネットワークの相互接続において、非常に重要な場となっています。

※ ピアリングについては、このブログの過去記事 BBIX BGP Meeting 2019 Summer で朝日ネットのバックボーンについて講演しました をご覧ください。

Peering Asia 3.0 の様子 ~ Let's Peering In English! ~

今回の会場はマレーシアの首都クアラルンプールにある、インターコンチネンタルホテルでした。2階、3階がカンファレンスメイン会場およびミーティング会場、出展となっています。

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会場の様子:Peering Asia 3.0

1日目の午前と2日目の午後にあったカンファレンスでは、開催国であるマレーシアの海底ケーブル事情、マレーシア大手通信事業者のキャッシュ導入実績、IX接続に必要なオペレーションをすべてAPIで実行可能とする「IX-API」などの紹介がされました。

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カンファレンスの様子:Peering Asia 3.0

Peering Asia が他のネットワークイベントと大きく異なる点は、カンファレンス以外に「Peering Meeting」というミーティングをするセクションが複数回用意されていることです。この Peering Meeting の時間を使い、各事業者同士で「ピアリングしましょう!」という話をします。参加者は事前に Peering Asia 3.0 のポータルサイトで話をしたい相手に連絡を取り、ミーティングを設定します。ピアリングリクエストに関するミーティング依頼だけでなく「日本の通信事情を教えてほしいのでミーティングしてください」なんてオファーもありました。

ミーティングの内容は残念ながら機密事項が多くお伝えできないのですが、今回この2日間でなんと1355ものミーティングが実施されたそうです。

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開催されたPeeringMeetingの数:Peering Asia 3.0

参加者はマレーシアの事業者はもちろんのこと、日本、ベトナム、中国などアジア圏のほか、ヨーロッパなどからも来ていました。お昼には↓のようなビュッフェが準備されており、お昼を取りながらミーティングをしている人たちもいた様です。また夜には Social Event がありました。Peering Meetingの時間は30分と限られているため、こういった場でも話をすることで、より込み入った相談をさせてもらい、交流を深めることができました。

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参加者に提供されたランチ:Peering Asia 3.0

インターネットは「相互接続」の基に成り立っていると実感させられるイベントでした。海外の通信事業者と話すことで、日本国内では当たり前と思っていた ”通信事情” が実は世界の中では独特な事情だったと気が付いたりと、国際的なイベントならではの収穫も多くありました。

クアラルンプールの通信環境について

現地の固定回線および3G/4Gを使ってみて思った事を紹介します。主な固定回線は、TIME社や旧国営事業者であるTelekom Malaysia社があります。また、クアラルンプール中心街では、あちらこちらでTIME社の広告を見かけます。

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TIME社ブロードバンドの街中の広告

総務省の世界情報通信事情 マレーシア(平成30年度版)によると、その他、Maxis Communications、Digi Telecomといった4つの事業者があるようです。宿泊先ホテル及びPeeringAsiaの会場にあった回線事業者は、TIME社の固定回線でしたので、簡単に日本までの経路及び品質を簡単に測定してみました。

  • 日本までは最短70ms~80ms程度、香港、シンガポールを経由するルートがほとんど、
    一部においてはアメリカ経由で200ms台
  • GoogleやAkamaiのインフラはマレーシア国内にあり、4ms 程度
  • IP Geolocation を使用したサイトは閲覧出来ない(例:動画配信系サイト)

宿泊先ホテルの回線にて、PCを複数台持ち込み負荷試験をしてみたところ、1端末当たり、30Mbpsで rate-limit が設定されており、2台合計で60Mbpsきっちり出ました。また、無線環境は、会場・ホテルともにruckus社製の無線アクセスポイントが使用されており、どちらもかなり気合いの入った無線環境が提供されており、非常に快適なネットワークを提供していただきました。PeeringAsiaの会場においては、インターコンチネンタルホテルの既存の無線アクセスポイントに相乗りする形で、専用のSSIDを払い出していました。ネットワーク系のイベントの為でしょうか、インフラ環境は充実していました。

3G/4G 回線については、出国前にAmazonでシンガポールのSingTel社のローミングSIMとタイのAISトラベルSIM (日本含むアジア圏で使用可能な物) 2枚を購入しました。現地空港で買うより、出国前にAmazonで買ったほうが安かった為です。SingTelはシンガポール及びマレーシアで通信量無制限のSIMで、割り当てられたIPアドレスはChunghwa/hinet、すなわち、中華電信で台湾のキャリアになりました。こちらは、CELCOM社およびDigi社の回線をつかみ、CELCOMはRTTも割と短く快適に使用出来ましたが、Digiに切り替わると3Gまで落ちてしまうことが多く、通信品質は良くありません。時間帯によっては15Mbps、台湾まで70ms、日本まで170ms 程度の性能です。AISのトラベルSIMについては、Maxisの回線をつかみ、他のキャリアに切り替わることはありませんでしたが、タイを中継するため、全体的にRTTは長めでした(タイまで70ms, 日本まで200ms)。こちらは、4GBの物であったため、負荷試験はしていませんが、ローミング先が切り替わる、圏外になるといったことは無く、非常に安定していました。英語で頭が煮えくり返りしばらく逃亡の為、ショッピングモールのスターバックスで休憩、SingTelのSIMでVPNを張り、リモートデスクトップ越しに少し仕事をしましたが、ストレス無く、仕事ができました。

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