朝日ネットで業務システムを開発しているkakoです。以前からやりたかったテーマに取り組んでみたいと思います。
やりたいこと
ISPの機能を持ったシステムを構築してみたい。
後述しますが、本気でISP事業者を立ち上げるのではなく、AsahiNet内のプライベートASになんちゃってISP(KakoNetと命名)を構築することを目標に取り組んでいきたいと思います。
モチベーション
筆者は業務システム開発のエンジニアとして勤務していますが、ISPって何をやってるの?どういう機能を持ってたらいいの?と考えてみたら、抽象的/概念的なことしか理解できていないなと…。ISP事業者で働き始めて数年が経っているのだから、自信を持って誰かに説明できるくらいにはなりたい…。じゃあイチからISPを作ってみよう!というのがモチベーションになります。
本気でISP事業者を立ち上げるには
ISP事業者として実際に事業を行うには、おおよそ下記のような手順を踏む必要があります。下記はフレッツ網を回線とし、PPPoE接続を行う場合の例です。
1.AS番号とIPアドレスの取得
- JPNIC/APNICに申請を行い、AS番号を取得する。
- JPNIC/APNICに申請を行い、IP指定事業者になる。
- JPNIC/APNICからの割り振り、または他のIP指定事業者からの割り当て/移転により、IPアドレスを取得する。
2.インターネットへ接続可能な経路の確保
- L3スイッチなど経路制御を行う機器を準備し、データセンターへ設置する。
- Tier1 ISP(NTTコミュニケーションズ)などとトランジット契約を締結する。
- データセンターなどでトランジット先との接続を行い、BGPで経路制御を行う。
3.電気通信事業の届出
- 電気通信主任技術者の資格を取得する。*1
- 総務省へ届出電気通信事業の届出を行う。
4.NTT東日本/西日本との相互接続
- RADIUSサーバを準備する。
- NTT東日本/西日本へ相互接続の事前調査を申し込み、種々の契約を締結する。
- NTT東日本/西日本の網終端装置などと相互接続の工事を行う。
5.エンドユーザとの契約締結や課金
- この項目は省略します…。
6.エンドユーザの当該ISPを利用したインターネット接続
- RADIUSサーバにユーザ名とパスワードを登録する。
- エンドユーザのネットワーク機器(PPPoEクライアント)にPPPoE接続の設定を行う。
- エンドユーザがインターネットに接続できる。
なんちゃってISP(KakoNet)の概要
前項のように本気でISP事業者を立ち上げるには、種々の契約や届出に加え、うん千万円の費用が必要になりそうです。今回の取り組みではそこまでのことはやりません…。
その代わりにISPに必要な機能を実装し、エンドユーザを模したホストがインターネットへ接続できるようなシステムを構築したいと思います。一般的なISPに必要な最低限の機能とは下記の2点になります。
- インターネット回線に接続されているお客様のネットワーク機器に、グローバルIPアドレスを割り当てる機能。
- お客様の回線がインターネットと通信できるように経路制御を行う機能。
AsahiNetのリソースをお借りして、前述のような機能を持ったシステムを構築する場合の実現案を考えてみました。その概要が下図になります。AsahiNetのAS内にプライベートASを作成し、KakoNetを構築してAsahiNetとBGPピアを張り、KakoNetのPPPoEクライアントがインターネットへ接続できるような、なんちゃってISPをイチから作ってみたいと思います。各機能の要素技術や構築手順などは次回以降に掲載します。
採用情報
朝日ネットでは新卒採用・キャリア採用を行っております。
*1:電気通信事業法によると、一般にISP事業者は届出電気通信事業者(第16条)であり、原則として電気通信主任技術者の選任は不要なため、資格を取得する必要はありません。しかし、電気通信回線設備を設置して電気通信事業を営む登録電気通信事業者(第9条)では電気通信主任技術者の選任が必要となります(第45条)。
また、第45条第1項の但書には「その事業用電気通信設備が小規模である場合その他の総務省令で定める場合は、この限りでない。」と例外が定められています。総務省令で定める場合として、平成27年総務省告示第278号より株式会社NTTぷらら、ニフティ株式会社、ビッグローブ株式会社が、平成30年総務省告示第199号より楽天株式会社が、ISP事業者でも電気通信主任技術者の選任が必要とされています。